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ナイチンゲール著作
および関連看護学文献集成  全6巻

Florence Nightingale
and the Birth of Professional Nursing

Edited by Lori Williamson, London Guildhall University

  1999年5月刊行
品切れ
ISBN: 4-931444-20-2


19世紀英国が輩出した女性フローレンス・ナイチンゲールは、近代看護学を確立し、その実践により輝かしい実績を残したことで知られていますが、同時に彼女は150篇にも上る文献を発表した社会思想家としての側面も持っていました。当時の英国や植民地インドにおける公衆衛生政策への批判、提言を含むこれらの著作を通じ、ナイチンゲールはヴィクトリア朝時代の英国社会に多大な影響力を発揮し、看護や病院そして社会の改革・近代化を推進したと言えます。本集成はそれらの著作から主要10篇を選択、加えて同時代の活動家による文献8点を収録することにより、近代看護学確立期における社会福祉全体像の解明や、ナイチンゲールの理念のより客観的位置づけを可能にします。看護学研究だけでなく19世紀英国社会史、文化史、そして文学の社会背景の研究に貴重な文献集です。巻頭には編者Lori Williamsonによる新序文が書き下ろされます。

●ナイチンゲールの主要著作10篇と同時代の活動家による文献8点を集成
●看護学・医学史、社会福祉、ジェンダー研究、英国社会思想史の資料としてお勧めいたします。

Nightingale contents

Volume 1
New introduction by Dr Lori Williamson 7pp
Notes on Nursing: what it is, and what it is not (1sst edition, 1860), 81pp
Florence Nightingale
Notes on Nursing: what it is, and what it is not (2nd edition, 1860), 237pp
Florence Nightingale
‘Training of Nurses and Nursing the Sick’
Florence Nightingale
in Richard Quain (ed.), Dictionary of Medicine, (1894), 231-44 [14pp]
‘Sick-Nursing and Health-Nursing’
Florence Nightingale
in Baroness Angela Burdett-Coutts (ed.), Woman’s Mission.
A series of Congress Papers on the Philanthropic Work of Women
.
(1893), pp. 184-205 [10pp]
‘Philanthropic Aspects of Nursing’
Lady Victoria Lambton and Mrs Frank Malleson
In Baroness Angela Burdett-Coutts (ed.).Woman’s Mission.
A series of Congress Papers on the Philanthropic Work of Women
.
(1893), pp. 206-215 [10pp]

Volume 2
Notes on Nursing for the Labouring Classes
Florence Nightingale
(1876), 114pp
Introductory notes on lying-in institutions: together with a proposal for organising an institution for training midwives and midwifery nurses
Florence Nightingale
(1876), 134pp

Volume 3
Notes on hospitals
Florence Nightingale
(1863), 199pp
‘Hospital Nursing’
Elizabeth Garrett
in Transactions of the National Association for the Promotion of Social science, vol. 10 (1866), pp472-8 [7pp]

Volume 4
Organization of Nursing. An Account of the Liverpool Nurses’ Training School, its Foundation Progress, and Private Nursing
By a Member of the Committee of the Home & Training School [William Rathbone]
Introduction and notes by Florence Nightingale (1865), 103pp
Infection
J. Clarke Jervoise, with remarks by Miss Nightingale (1882), 63pp
The Madras Famine: with appendix containing a letter form Miss Florence Nightingale, and other papers
Arthur Cotton [1876], 47pp
‘On Nursing’
Jane Stuart Wortley
in baroness Angela Burdett-Courts (ed.), Woman’s Mission.
A Series of Congress Papers on the Philanthropic Work of Women
(1893), pp.216-23 [8pp]

Volume 5
Letters from Miss Florence Nightingale on Health Visiting in Rural Districts
(1911), 61pp
Florence Nightingale to her Nurses: A Selection from Florence Nightingale’s Addresses to Probationers and Nurses at the Nightingale School at St Thomas’s Hospital
Edited by Rosalind Nash (1914), 158pp

Volume 6
A Guide to District Nurses
Mrs Dacre Craven (1889), 157pp
Lectures on Domestic Hygiene and Home Nursing
Lionel A. Weatherley
[1880?], 90pp
Introduction to William Rathbone, Sketch of the History and Progress of District Nursing
Florence Nightingale
(1890), ix-xxiipp [14pp]

 

推薦文
ナイチンゲール看護研究所
日本社会事業大学
金井 一薫


 F・ナイチンゲールは、19世紀半ば過ぎのイギリスにおいて、“看護の社会化”を促し、専門職としての「看護婦」の確立と、組織としての看護制度の創設とに、多大な影響を与えた人物である。
 クリミア戦争におけるナイチンゲールの功績は、広く社会に知れ渡っているが、最近では、彼女の真価を、クリミアから帰還後に書かれた数々の論文の内に求める動きが活発化している。総数150点にも及ぶその印刷文献の量にも圧倒されるが、多分野にわたってなされた彼女の提言の“今日性と現代性”には、目を見張るものがある。
 ところで、これまでの我が国におけるナイチンゲール文献研究は、過去30年間にわたって、他国のそれとは比較にならないほど、積極的かつ本格的に進められてきており、その研究水準は極めて高い。しかしながら、本集成『Florence Nightingale and The Birth of Professional Nursing』(全6巻)には、ナイチンゲールの代表作10編と、当時の社会活動家や女医たちによって編まれた関連文献8編が収められており、総数では18編におよぶ。我が国でこれほどにまとまった原文の集成がなされたのは初めてである。そのうちナイチンゲールの手になる10編は、いずれもナイチンゲール文献としての価値が高く、ナイチンゲール思想研究には欠かせないものばかりである。特に『Notes on Nursing』(看護覚え書)は、初版本(1859年)・改訂本(1860年)・労働者階級版(1876年)の3種類が揃っており、今後の『看護覚え書』研究に資するところ大である。
 全6巻の著作群を通して、18編の論文が投げかけている課題は、大別すると4点あり、それはいずれも現代の日本社会が抱えているテーマと一致する。その課題とは以下である。1.看護とは何か。2.病院はいかにあるべきか。3.実践者教育のあり方と課題。4.在宅ケアの姿とそのあるべき方向性。
  ナイチンゲールは人類史上初めて、看護とは何かを明確にした人物だけあって、これらの課題についての見解は、実に明快である。さらに同時代人の著名な人物による同類の課題への見解は大いに参考となるであろう。
 これらの課題は、高齢化のうねりの中で、「介護の社会化」と「在宅ケアネットワーク」を実現していかなければならない我が国の実情に、新たな光を投げかけてくれるものである。
 日本の保健・医療・福祉が一つの方向を定めて協同していくに際しては、そのシステムを支える理念や哲学を共有することが必要条件であるが、本集成は、古くて新しい医療と福祉の課題を解く鍵を提供してくれそうである。
 歴史的遺産から、われわれが学ぶものは大きいのである。