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John Genest 著
英国演劇史  全10巻
- 王政復古期から19世紀演劇へ-

Some Account of the English Stage
from the Restoration in 1660 to 1830
 

1997年11月刊行
本体セット価格 \190,000 *在庫切れ

ISBN 4-931444-02-4
6,470 ペ−ジ

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1660年の共和政体の崩壊とともにダヴェナントらにより再開された英国の演劇活動は、ロンドンのTheatre Royal (後のDrury Lane劇場), Lincoln's Inn Field の2劇場での上演から地方へと広がり、18世紀の名優時代演劇へと華々しく展開されてゆきます。ギャリック、ケンブル、キ−ンなどの演劇史上の名優を輩出したこの時代は、エリザベス朝演劇に新たな解釈を加えただけでなく、スティ−ル、シェリダン、バイロンらロマン派の詩人たち多くが舞台に関わり、演劇の黄金期を迎えます。本書は、英国演劇、文学研究に最も重要とされるこの時代の英国の演劇活動、上演史を克明に記録した一級の資料です。作者のJ. Genest はこの研究に全生涯をささげたとも言え、それによってのみ、後世に名を残しました。

推薦文

「黄金時代の稀覯書」 大場建治


イギリス演劇史をとおしていちばん面白い時代はと問われたなら、まず一般にはシェイクスピアの時代と答えるのが常識というものだろう。あるいは現代という答えも当然予想されるが、今世紀後半のイギリス演劇のめざましい展開を思えば、それもあながち奇をてらった答えということにはならない。ジョン・オズボ−ンにはじまる「新しい波」の作品群は、確実に世界の演劇をリ−ドしつづけてきたのだから。
シェイクスピア時代といい、20世紀後半といい、そういうたぎりたった時代にくらべると、17世紀後半からの2世紀は、戯曲の面からみてやはり貧困の時代だったとしか言いようがない。王政復古期の風習喜劇の傑作を除けば、演劇史に名をとどめるであろう作品は片手の指で十分に間に合う程度である。それでは演劇自体が低調だったのかというと、そこが演劇芸術の面白いところで、おそらくこの2世紀ほど、演劇が、娯楽の、あるいは文化の王座を占めていた時代はなかったのではないか。絢爛豪華な大劇場を舞台に名優が輩出してはなやかな演技を競い、小劇場は小劇場で元気溌剌たる活動をくりひろげる。戯曲は、つまりは演劇芸術の一つの要素にしかすぎない。戯曲をどう演ずるか、そこにこの2世紀の演劇の興味は集中した。これこそはまさしく演劇の黄金時代。そういう時代の演劇を追体験するには、戯曲が中心でないとなれば、上演の記録そのものに即くしかない。上演の台本、演劇評論や演劇ジャ−ナリズムの実際、俳優の言行録、裏方の雑録、などなど。けれども、舞台裏の埃に埋もれたまま放置されてきたその「などなど」のひとつひとつを丹念に吟味しながら拾い集めて、それを分類し、まとめ上げる、その仕事は時間と労力をほとんど無限に要求するであろう途方もない大事業のはずであるが、それをとにかくやってのけたのがジョン・ジェネストという演劇の好事家だった。 1764年の生まれ。ケンブリッジを出て聖職者になるが、健康に恵まれず、保養のためバ−スに引きこもる。好事家とバ−スが出会えば、古きよき時代のイギリス文学史では、傑作、労作が生まれぬはずがないのである。1832年に完成した全10巻の本書がその奇蹟の結実であり、黄金時代のこの稀覯書がようやくにして復刻されるという知らせほど、近来わたしを興奮させたものはなかった。