イザベラ・バード
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イザベラ・バード著作集 全12巻
Collected Travel Writings of Isabella Bird
with a new introduction by O. Checkland, Fellow (Overseas), Fukuzawa Memorial Center, Keio University, Tokyo
  1998年1月刊行
4,761頁
ISBN 4-931444-03-2
品切れ


「日本奥地紀行」や 「朝鮮奥地紀行」で著名なイザベラ・バードの初めての全集が遂に刊行されます。送キこそが文化比較である窒ニされた19世紀に、日本、アジア諸国、ハワイなど世界の奥地へ足を踏み入れていったバード。彼女の残した旅行記は、文学としてだけでなく、人類学、民族学、比較文化学、地理学の貴重な資料として現在国際的な注目を浴び、多くの研究書、伝記が発表され続けています。また、女性が限られた役割しか与えられなかった当時の英国社会で、自分の可能性に挑戦し、旅行家を職業として独り立ちしたバードを、フェミニズムの見地から研究する試みも進んでおり、その全集が待たれていました。この全集は、バードの旅行記全てを初版本の復刻で収録。特に 「日本奥地紀行」は第2版や邦訳版には省かれている伊勢への旅行も含む完全版になっています。また、モロッコ、オーストラリア旅行など、雑誌のみに掲載された紀行文も収録。巻頭には 「イザベラ・バード 旅の生涯」 (日本経済評論社刊)の著者O.チェックランドの序文が書き下ろされています。
 


イザベラ・バード
Isabella Lucy Bird Bishop(1831−1904)

ヨークシャーの牧師の家庭に育つ。23歳のとき、療養のためにアメリカとカナダを旅行し、1856年処女作“The Englishwoman in America”を発表。40歳を過ぎてから日本やアジア諸国の旅行をはじめ、それは70歳まで続く。著書は、東洋の民族・生活の記述が大きな反響を引き起こし、多くがベストセラーになった。講演会も人気をよび、職業的旅行家として女性の自立の道を選ぶ。1892年に英国及びスコットランド地理学会の初の女性特別会員になるが、その選出は、“旅は男性のもの”は男性のもの曹ニ考えられいた当時の社会で波紋を投げかけた。73歳、エディンバラにて没。 


内容詳細
Vol.1 Introduction by O. Checkland
序文 : O.チェックランド 慶應義塾大学福澤研究センター客員所員
The Englishwoman in America, 1856, 471pp
英国人女性の見たアメリカ:7ヶ月間のカナダ・アメリカ東部の旅行記。
Vol.2 The Hawaiian Archipelago: Six Months among the Palm Groves, Coral Reefs, and Volcanoes of the Sandwich Islands, 1875, 482pp
ハワイ旅行記:ハワイでの6ヶ月間の記録。先住民の記述、キラワエア火山へのジャングル探検等、バードの民族・人類学的視点が明らかに示されている。
Vol.3 A Lady's Life in the Rocky Mountains, 1879, 308pp
ロッキー山脈踏破行:ロッキー山脈での6ヶ月間の生活記。 初刷は1週間で売り切れる大ベストセラーとなった。
Vol. 4 & 5 Unbeaten Tracks in Japan: An Account of Travels in the Interior, including Visits to the Aborigines of Yezo and the Shrines of Nikko and Ise, 1880, 2 vols. , 807pp
日本奥地紀行: 日光から新潟、 山形、 秋田、 青森と旅した明治時代の東北の記述や、アイヌ村での生活・習慣の観察が広く研究対象となってきた著作。邦訳や普及版に省かれた、神戸から京都、奈良、伊勢、琵琶湖紀行も含める。
Vol.6 The Golden Chersonese and the Way Thither, 1883, 401pp
黄金の半島:マレー半島旅行記:シンガポールからマラッカ、ペナンへと旅行。 象に乗ってのジャングル探検記とともに、イスラム教の小共同生活への関心や奴隷制への見解などが語られる。
Vol. 7 & 8 Journeys in Persia and Kurdistan, including a Summer in the Upper Karun Region and a Visit to the Nestorian Rayahs, 1891, 2 vols., 809pp
ペルシャ、クルディスタン、トルコ旅行記:英国とロシア間の紛争で緊張の高まる中央アジア地域の旅行記。 後にバードは、英国議会でアルメニア問題につきグラッドストーンらの質問に答える。
Vol. 9 & 10 Korea and Her Neighbours: A Narrative of Travel, with an Account of the Recent Vicissitues and Present Position of the Country (With a Preface by Sir Water C. Hillier), 1898, 2 vols., 611pp
朝鮮奥地紀行:1894年から4回計9ヶ月間滞在した朝鮮各地の旅行記。国王や各国の公使らとも会見したバードの記録は、揺れ動く極東の政治状況も描き出している。
Vol. 11 The Yangtze Valley and Beyond: An Account of Journeys in China, Chiefly in the Province of Sze Chuan and among the Man-Tze of the Somo Territory, 1899, 573pp
中国(揚子江渓谷とその奥地):1895年、1896年の2度に亘る中国訪問記。 上海から漢江、成都、そしてタタール人の住む未踏の地へ足を進める。 義和団事件直前で西洋への敵意に満ちたこの時代の中国での驚くべき体験の記録。
Vol. 12 Among the Tibetans, 1894,160pp Chinese Pictures,1900,128pp Australia Felix : Impressions of Victoria, 1877, 40pp Notes on Morocco 1901, 14pp
チベット旅行記、中国写真集、雑誌掲載紀行文(オーストラリア旅行、モロッコ旅行)


推薦文
「比較文化の貴重な研究資料」
立正大学教授 ・ 日本英学史学会会長 速川和男

今はむかし、西南戦争の翌年に来日して通訳と二人きりで東京を起点に東北から北海道までを3ヶ月で踏破した英国女性がいた。その女性バードによる「日本奥地紀行」は、未だ新橋・横浜間しか鉄道が敷かれていなかったころの冒険談として読んでも面白く、文献として非常に貴重な記録となっている。それは本書のアイヌ部落の記録が、有名なジョン・バチュラーの「日本のアイヌ」(1892)以前のものであるといる一例でも証明される。また読者によっては、この旅が元来病弱な彼女の保養のためと大自然の驚異に対する憧れから始められたものと聞いて、勇気と励ましを受けることであろう。
バードは用意周到にパークス、アーネスト・サトウ、チェンバレン等多くの日本事情通の情報を自家薬籠中のものとし、外国人がよく足を伸ばすところについては詳述しないという方針をとっている。ラフカディオ・ハーン等と同じように文明開化途上の日本人の異常な好奇心にさらされながら、今はすでに見られない奥地の姿をありのままに、自筆のスケッチを添えて書き残した希有の記録として本書は明治の日本の古典として永遠に残る。
「日本奥地紀行」は今まで関西地方を省略した普及版の形で読まれてきたが、本全集では初版の完本の形で読めるのが有り難い。バードの日本語訳は未だ数点しかないと思うが、本全集は、初めての彼女の旅行記 「英国女性の見たアメリカ」を始めとして、バードが足を伸ばしたマレー半島、朝鮮、ペルシャ、中国等の旅行記を網羅しており、当時の一流国 ・英国の女性の立場から見た比較文化記録として多くの面で貴重な研究資料となると同時に、贅沢な読み物としての楽しみをも提供してくれる。