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分野:アイルランド・英国史、政治・経済学史、啓蒙思想、フランス革命史、18世紀研究
復刻版
アイルランド議会資料 1781−1797 全17巻
The Parliamentary Register:
or, History of the Proceedings and Debates of the House of Commons in Ireland, 9th October, 1781− 5th July, 1797
新序文:W. J. Mc Cormack, Goldsmiths College, London
激動の18世紀末ヨーロッパ史の記録
  1999年10月刊行
品切れ
ISBN:4-931444-31-8
底本1784-1801年刊
「ユナイテッド・アイリッシュメン」の蜂起を頂点とする1780-90年代の アイルランドは、英国への併合を直後に控えた両国関係史上もっとも注目 されている時代であるとともに、フランス革命やスコットランド啓蒙思想と の関係といった視点からも、政治思想史や経済学史研究者に多くの研究課題 を投げかけています。 本書はこの時代の、1784年から1801年にかけてダブリンで刊行された下院議会 記録集の初めての復刻です。ヨーロッパ史の大きく動いた18世紀末の原資料 として第一級の情報源ですが、国内外を問わず本書の原本を所蔵する機関は 極めて少なかったため、研究者に広く知られることのなかった文献です。 今後のヨーロッパ史研究に不可欠な資料となってゆくと考えられますので、 是非人文・社会系研究室、大学図書館での購入をご検討ください。
本書の特徴
●英国によるアイルランド併合直前の議会の記録  
●カトリック、議会改革、貧民救助、交通、税金など18世紀アイルランド問題を網羅  
●英国政治思想史、経済学史、フランス革命研究など関連分野多数  
●原本の所蔵は英国の図書館にも極めて稀な貴重文献  
●W. J. マコーミック(ロンドン・ゴールドスミス カレッジ教授)による新序文  
推薦文
「グラタン議会の実状を知る第一級資料」
日本アイルランド協会理事長 上野 格

 アイルランド議会記録 1781-1797 全17巻(The Parliamentary Register, or History of the Proceedings and Debates of the House of Commons of Ireland) が完全復刻版になった。これはアイルランド史研究者にとってばかりではなく、18〜19世紀のヨーロッパ社会を研究する多くの研究者にとっても大変な朗報である。
 この時期のアイルランド史ことに政治・経済・社会・文化を研究する者にとって、この庶民院記録(若干の貴族院記録を含む)がどれほど重要な資料であるかは、改めて云うまでもないであろう。いわゆるグラタン議会(1782〜1800)の全貌を記録した唯一の資料であるが、日本の研究機関ではまだどこも所蔵しておらず、これまでは Trinity College, DublinのBerkeley Libraryかロンドンの大英図書館で読むしか方法がなかったものである。
 残念なことに、これは‘97年で途切れており、そのため’98〜1800年の議会解体・イギリスへの併合にいたる論議は記録されていない。途切れた理由はあまりはっきりしていないが、主たる発行人の一人であったPatrick Byrneが煽動罪で逮捕され、その後アメリカへ移住したためではないかという説がある。 しかし、’82年以降相対的自立をかちとったアイルランド議会で、経済政策やアメリカ・フランスとの関係、カトリック参政権等をめぐって戦わされた激しい論戦の記録は、最後の3年間の欠落を補って余りあるものである。通説的な「栄光のグラタン議会」とは別の、混乱し利害錯綜した状況がそこには生々しく描きだされている。
 この時期のアイルランドの動き、例えば’98年のユナイッテッド・アイリッシュメンの蜂起等をアメリカの独立、フランス革命、スコットランド啓蒙等との関連で解明しようとする研究が盛んなことは周知のことだが、この議会記録はそうした「ヨーロッパ思想・運動史」研究の原資料としても貴重なものといえよう。
 このアイルランド議会記録はウエストミンスター議会議事録Parliamentary Papersより20年も早くから出版されており(後者は庶民院が1801年から、貴族院は1804年から)、最初から事項・人名索引がつけられている。索引には思わぬ効用がある。それは議員300名の伝記的研究および選挙区との関係から見える地方史研究等の資料としての効用である。復刻版に付けられたW.J.McCormackの序文によると、1797年からの議員に<F.Syngeという人物がおり、それはJ.M.Syngeの曾祖父であった。文学者Syngeは曾祖父がアイルランドを裏切ったか否か絶えず気にしていたという。McCormackによれば、この議会記録はアイルランドの図書館にも殆ど所蔵されていない(exceptional rarity)という。この復刻版が今後の研究に資するところは非常に大きいと期待できよう。